東京高等裁判所 昭和49年(う)2065号 判決
被告人 真島浩通
〔抄 録〕
原審記録および原審および当審取り調べの関係証拠を検討してみるに、押収にかかる計六片の物件は、被告人が原判決判示の方法により作出したものであるが、右各物件は、通常人がこれを入手した場合に、真正の銀行券を、四つ折、又は八つ折にしたものと思い誤る程度の外観、手ざわりを備え、真正の銀行券として流通する危険を具えたものと認められるうえ、被告人が行使の目的で変造通貨を作製する行為に出たものと認められるから、被告人の右所為は、通貨変造の既遂罪を構成するものというを妨げない。従って、右所為が通貨変造の既遂罪は勿論、同未遂罪にも当らないとして、犯罪を構成しないものとした原判決には、法令の解釈、適用の誤りがあり、右の法令違反は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は全部破棄を免れず、論旨は理由がある。
よって、刑訴法三九七条、三八〇条により、原判決を全部破棄し、同法四〇〇条但書により、被告事件につき更に判決することとする。
(罪となるべき事実)
被告人は(中略)
第六 同年一月二八日ころ、沼津市東沢田九一〇番地の三の自宅において、行使の目的をもって、真正な日本銀行券一、〇〇〇円札二枚を用い、うち一枚を水でぬらして、はがれやすくしてから、手でもんで表と裏に剥離し、鋏で各二片に切断し、一、〇〇〇円券片四片を作り、うち三片につき、印刷のない片面を内側にして間に厚紙を挿入し、二つ折にして糊付けし、残り一片につき、印刷のない片面を内側にして間に厚紙を挿入し、四つ折にして糊付けするとともに、他一枚を鋏で二片に切断し、一、〇〇〇円券片二片を作り、いずれも裏面を内側にし、四つ折にして糊付けし、もって真正な日本銀行券一、〇〇〇円券を四つ折または八つ折にした外観を有する一、〇〇〇円券合計六枚を変造したものである。
(荒川 谷口 時国)